2021年7月22日木曜日

和の暮らし歳時記教室 第2回 を開催しました

 令和3年7月9日金曜日
「和の暮らし歳時記教室」第2回を開催しました。
本日のテーマは「水無月の手しごととお茶・お菓子」です。
今日の講座は古布で「ちりはたき(塵叩き)」を作ります。
作る前に、先回に続いて「布」のお話を聞きました。








まずは、「背守り」について。
背守りとは、昔、親がわが子の身を案じて、
お守りのようなものを着物の背中に縫い付けたもののことです。
医療の発達している今と違って
昔の子どもは病気で亡くなることも珍しくありませんでした。
ですから、七五三も、3歳、5歳、7歳の節目にその成長を祝い
3+5+7=15歳で元服するまでは、親は、
「子どもは神様からの預かりもの」として大事に扱い
15歳で人間の世界に来たとみなしたということです。
背守りはそんな親心から来た風習。
前からくる敵は防げても、背後から来るものには気付きにくい。
だから背中に付けたのだとか。
この日に見せていただいたのは刺繍状のものでしたが
中には紐が付いていて、物理的にも(例えば、川から落ちそうになった時など)
紐を引っ張って助けることが出来る形状のものもあるそうです。














次は「百徳着物」
これは頑健な身体の持ち主とか、みんなから尊敬されている人とか、徳のある人
100人からその人が来ていた着物の端切れをもらって縫い付けたものです。






どれほど手間ひまがかかっているのでしょうか?
子の幸せを願う親心は果てがありませんね。



この継ぎはぎだらけの袋は米を入れていた袋(何と呼ぶのかわかりませんが)です。
むかし、修学旅行や、知り合いの家にお泊りに行くときなど、
米を持参したそうです。それを入れていた袋。
丁寧に縫ってあります。



この袋を巡っては、満里子先生にちょっぴり切なくなるような逸話がありました。
学生のころ、教職で地元鳥取の小学校で教育実習をしたそうです。
中には家庭環境から寂しくてつい天邪鬼な行動をとる子もいたとか。
だから先生はその子たちに、放課後バスケットボールを誘うようにしていたそうです。
いまでは想像しにくいですが、お菓子をおねだりする子がいて買ってあげてもいたとか。
そうやって、当時慕ってくれた子のうち3人が
後に先生がご結婚されてから、高浜市まで遊びに来てくれたそうです。
まだ小さいお子さんを負ぶって、電車で犬山まで観光に連れて行ったとか。
3泊ほどして3人が帰る日、駅まで送って家に戻り、
立てかけてあった丸いちゃぶ台をどかすと
米の入ったこんな布袋が3つ並んで置いてあったそうです。
子どもたち(もう青年でしょうか)は、親に持って行けと言われても
なかなか恥ずかしくて、先生に渡すことが出来ず
3人で話し合って、そっとちゃぶ台の陰に置いたのではないか
と、先生は想像して涙がでたそうです。
田舎の子たちはいじらしいですね。

いよいよ、本日の手しごと
古布で「ちりはたき(塵叩き)」を作ります。
今日お持ちいただいた布たちは、
そんな風に昔の人たちがいつくしんで織ったり縫ったりしたものを
ほどいて、洗って、大きさをそろえてカットし、
アイロンをかけてきてくださったものです。







これに等間隔で切れ目を入れ
そこから手で布を割いて、叩きの布部分を作ります。




持ち手は竹です。
竹には穴が開いていて、竹串が通っています。
そこを目安に、きれいに束ねた布を麻ひもで縛り、
ひっくり返してまあるく整えてもう一度結わえます。
こんな風に塵叩きが出来上がるのです。



布は2色使いをするととってもおしゃれですし、同系統の配色も素敵です。
シックなブルー系でまとめた方、涼し気な白地に紺色の花模様、朱色…
と、各受講者さんの好みのものが出来上がりました。



個性豊かな「ちりはたき」が出来上がりました!







【着物一着 お蚕さん三千匹】
これは私たちが着る絹の着物を一反織るのに
お蚕さん三千匹分の繭を使っているということです。
綺麗な着物を身に着けるのに当たって、
私たちはそんなにも多くの命をいただいているのですね。

【すぐに日本人と分かった所作】
先生が3年前、アメリカのポートランドにご旅行された時のお話。
所用も終わり、美術館でお茶をしていた時、隣に女性が座りました。
それで先生はその方の側にあったご自分の荷物を少し自分の方に寄せたのだそうです。
その一つの動きを見て、相手のかたが
(米在住ではない)日本人だとわかったのだそうです。
その後は意気投合し、その方のお招きで再訪米したときは、
米国人の方々に折型などの講義をなさったそうですよ。
ご縁はどこにあるかわかりませんね。
先生の所作ひとつで生涯の友人となられる方に遇うことも出来るのです。
このようなお話をききながら、講座はすすみました。

内藤満里子先生は
いつもアンティークの道具をみせてくださいます




さて
本日のお茶とお菓子
お茶はレモングラスと緑茶のミックス
和菓子は「水無月」



三角のこのお菓子は
何度切っても三角になるちょっと不思議なお菓子です。
このお菓子の謂れは、
むかし、貴族は冬の間に出来た氷を氷室で取っておいて、
暑い夏に食していたのだそうです。
ですから庶民にはご縁のない話。
ずっと時代が下って
誰もが口にできる、夏に口当たりの良い外郎として復活したようです。


上にのっているあずきは「赤」=「いのち」の象徴だそうで
1月から半年を終え、残り半年を息災で過ごせるようにと
願っていただくものなのだそうです。


この日も飲食禁止のため、水無月はお預け。
おうちに帰って、自作のおしゃれはたきを眺めながら、
みなさん召し上がってくださっているでしょうか…



次回の「和の暮らし歳時記教室」第3回は
ひと月飛んで 
 9月10日金曜日 13時30分から です

皆さまのご参加をお待ちしています。
おたのしみに。